藤田昌志 比較文化学のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

誤訳の恐ろしさ  2014.9.2 月

比較文化学的

       周恩来と田中角栄 日中共同声明の前の宴で 1972年
  誤訳の恐ろしさ
 NHK朝の連続ドラマ『虎に翼』で在日朝鮮人放火犯(被疑者)の書いた文章の中の「テウタ゛」(燃やす)が「ソグル テウダ」になると「気をもませる」という意味になるが、それを知らず誤訳(朝鮮語→日本語)して被疑者が「(家を)燃やす」と言っていたということになり、冤罪が生じかけてしまったことを取りあげていた。結局、誤訳が判明し、被疑者は無実が証明されたが恐ろしい話である。
 誤訳で有名なのは、かつて1972年の日中共同声明の前に田中角栄氏がスピーチで「過去に中国に多大な迷惑をかけた」と言ったのを、通訳が“给你们添了麻烦”と訳して、周恩来首相が「うっかり女性のスカートに水をひっかけた」ようなことを言うとは何事かと怒ったという話がある。通訳に中国語の書き言葉についての教養、知識がなかったのである。通訳の中国語をチェックする上の人間もお粗末だったということになる。外務省といっても、語学力はその程度だったのだ。
 結局、毛沢東が後日、田中角栄氏に会ったときに『楚辞集注』を贈り、『楚辞』の“迷惑”の場合のように、漢字の“迷惑”の意味にはいろいろな場合の意味があるので、中国は気にしていないよということになった、現代中国ではそれが通説になっている。大人の対応と言えるだろう。
 ちなみに“迷惑”とは現代中国語では「色気で惑わす」という意味であり、「ミニスカート」のことを“迷你裙”(あなたを惑わすスカート)というのは中国語を少し勉強した者ならだれでも知っていることである。日本語の「覚える」がどうして「思う」ではなく「暗記する」意味に収斂したかということなどを研究し、解明しつつあった荒川清秀氏は残念なことに71歳の若さで2、3年前に亡くなられた。氏が解明される予定だった和製漢語、和語のいわれ、来歴の研究は今後の大きな課題である。
 


                             2024.9.2  月曜日

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