殯 もがり 2026.2.9 月

仲哀天皇殯斂地 斂 レン は「収める」意。
殯 もがり
殯とは死後、その人間の遺体を一定期間以上、地上に安置すること。そのために仮の宮を建てる。これを殯宮といった。貴族、一般庶民も行うことがあったが、長期にわたって行い、さまざまな儀式を挙行した点では天皇家の場合が際立っていた。
殯は霊と肉の分離が徐々に進行している状態を言ったものである。分離された「天皇霊」を次代の天皇の体に憑依せしめるところに大嘗祭の本来の姿があったのではないか。
殯は先王の死と新王の即位を結びつけるための実に巧妙な肉体の二重装置を意味していた。
山折哲雄(2014)『天皇と日本人』大和書房 pp.87-97
ノート
天皇の死後、次の天皇が即位するまでの間に空白があるのはまずい。その間、死んだとしても肉体としての天皇は存在し、次代の天皇が前代の天皇の「霊」を憑依させる大嘗祭を行うまで肉体を安置しておくところが殯宮である。理屈としては死んだ天皇の肉体に天皇霊もまだ付属している。その天皇霊を大嘗祭で新天皇に憑依させるというのは極めて密教的である。神秘的に、一般のうかがい知れぬ儀式が行われる大嘗祭は、ある意味、トリックである。最近は高御座に入り、出てくると新天皇となっている。マジックショーのような雰囲気があるが、神秘性がなくなり、天皇はそれだけ一般人に近づいたということか。
神としての天皇が人間天皇になったのが1946年の1月。天皇が一方的に人間宣言をして、国民との親愛と信頼に基づく象徴天皇制はスタートを切ったが、一体、いつまでこの象徴制は続くのだろうか。天照大御神をほうふつとさせる敬宮が救世主となるのだろうか。今上天皇は、控えめに誠実に、ひたすら国民の幸福を祈る自らの役割を果たしている。
2026.2.9 月曜日