文學談義⑤ 三島由紀夫

文學談義⑤ 三島由紀夫
三島由紀夫の自衛隊市ヶ谷駐屯地での自決は文学という虚学に対する行動によるアンチテーゼである。三島は典型的な「文弱の徒」である。死の臭いのする祖母の部屋で幼少期を過ごした三島は文章、文学で世界を作ることに魅せられていく。しかし、そうした文弱の徒としての自分が嫌で、ボテイービルをして体を鍛えたり、チンピラやくざに美を見出したり、武士の切腹に特権的美を謳ったりした。
鴎外の後継者と目される三島の文章の持つ客観的美は文学的美をはみ出して、行動の美で人生を締めくくることを三島に要求した。三島は文弱の徒であることを潔く切り捨て、行動の人として死ぬことを選んだ。文に裏切られ、文を棄てた。そこには三島の『金閣寺』と同じ構造が見いだされる。
2023.7.13 木曜日