劇作家 平田オリサ゛氏のロシアのウクライナ侵攻への見方

劇作家 平田オリサ゛氏のロシアのウクライナ侵攻への見方
2023.2.24 金 京都新聞 夕刊に、劇作家の平田オリザ氏がロシアのウクライナ侵攻について、19世紀のロシアの状況との類似点から優れた洞察を述べている。タイトルは「芸術に戦争を止める力はないが異なる価値観をつなぐ」である。
19世紀にロシアでチェーホフ、ドストエフスキー等の文学、演劇が盛んになった理由は、近代化に乗り遅れたからだと平田氏は言う。フランス革命後の近代化を進める欧州とは対照的で、当時のロシアは農奴制で少数の地主や知識人が大多数の農民を支配、搾取していたが、没落の憂き目に直面していく。チェーホフやドストエフスキーはそうした支配者の繁栄と没落の「はざま」や「ずれ」のある所に生まれていった。
特権階級の幻想から抜けきれない地主らの意識は、下級階級や少数民族への抑圧、排除の心理へとつながっていく。こうした歴史を踏まえると、冷酷で専横的なプーチン大統領のウクライナ侵攻は国民の一定の支持を集めていることと無関係ではないように感じると平田氏は言う。
芸術に戦争を止める力はないが、社会の中での芸術の役割はエンパシーを育てることで、エンパシーは異なる価値観を持つ人の考えや行動を理解しようとする心のことである。
ロシアの演劇関係の協会が反対声明を出し、ウクライナの演劇人との連帯を表明した。エンパシーでつながっていることに小さな希望の灯がある。
今回の侵攻を一刀両断に糾弾するのではなく、過酷な戦地で生きている人間の小さな営みをすくい取って描く、それが自分たち劇作家の仕事だと考えているという文で平田氏はこの文章を締めくくっている。
ノート
時代の流れにさおさした過去の歴史とだぶらせ、現代のロシアを考えるという深い洞察がある。「今回の侵攻を一刀両断に糾弾するのではなく」というところにマスコミや一般人の単純な批判への自制心があり、「過酷な戦地で生きている人間の小さな営みをすくい取って描く、それが自分たち劇作家の仕事だと考えている」というところに平田氏の劇作家としての良心が感じられる。マスコミ報道からはこのような良心が感じられない。ゲスマスコミは事細かに現状を憶測を加えながら詳述するだけである。視聴率を一番に、意識しながら。
2023.3.1 水曜日