藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

AIでユートピアは来るか?

    

            佐和隆光 (京都大学名誉教授)


   AIでユートピアは来るか?
   イギリスの法律家兼思想家トーマス・モアが『ユートピア』を書いたのは、1516年。中世カトリック教会の権威よりも人間性に重きを置いたモアは1日の労働時間を午前、午後の各3時間とし、家族は夕食を共にし、余暇は知的活動に費やす生活をし、拝金主義や奢侈な生活を軽蔑する『ユートピア』を描いた。
 AIに仕事を奪われるという識者は多いが、AIによる生産の自動化を「ユートピア到来」と肯定的にとらえる識者は皆無に等しい。
 AIによる自動化が進めば進むほど、生産、経営、金融などへの人々の関心は薄れる。労働時間が短縮されると、人々は余暇の時間を学問、芸術などの関心あるものに使うようになる。
 AIは「究極の技術革新」で、16世紀初頭に思想家モアが考えた生産労働の苦役から解放された人々が余暇の活用に「生きがい」を求めるユートピア(ギリシャ語で「架空の国」)へと、好むと好まざるとにかかわらず、私たちをいざないつつあるのだ。(内容要約)


         2023.10.15 日 京都新聞朝刊 天眼 「AIで「ユートピア」到来?」 
                         佐和隆光 (京都大学名誉教授)


  ノート
 AIを金儲けに使おうとするか、豊かな精神生活のために使おうとするかが分かれ道。AI自体に思想はなく、過去の膨大な知識をまとめる便利な機能があるだけである。そのまとめたものにどのように価値を見出すかは人間がすることである。今のようにごく一部の者が拝金主義で儲かるようなことではAIも彼らのための金儲けの道具となるだけだ。
 優秀な社会のトップレベルからそうしたことへの改革がなされないと、ジリ貧の日本が続く。
 非正規雇用四割だって、法律を変えたら解消できるのだ。ただ、雇用する側からいえば、能力・実力もなく、マナーも悪い、見た目も下品な、文句ばかり言う、生産性のない、つまり金儲けに役立たない人間はいらないということで、わからないことはない。しかし、誠実でまじめに努力する非正規雇用もいる。そうした人間に光を当てていないのが問題である。
 日本は一番の国の真似をするだけだと批判したのは、『文明の衝突』のハンチントン。アメリカの真似をしてきた戦後80年の日本の生き方が問われている。そのことの自覚から始めるしかない。日本はもう先進国ではないのだ。


                      2023.10.24       火曜日













                               2023.10.24 火曜日

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