藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

 カリスマ清掃員 新津春子さん       2023.12.8

     カリスマ清掃員 新津春子さん
  1970年 中国・瀋陽生まれ。来日し、27歳で清掃の全国競技会で1位に。「世界一清潔な空港」に度々選ばれた羽田空港で長年、清掃員の責任者を務めてきた。
   新津さんの父親は戦後、幼い時に中国に残った日本人で、母親は中国人。中国の小学校では日本人だと石を投げられた。おじさんが、いじめた子の家の中をめちゃくちゃにして、「次はないよ」と脅していじめは止まった。でも、日本ではだめ。今の私はいじめられたら覚えておいて、いつか相手だけでなく多くの人に認めてもらう。居場所がないなら作る。それが結果的に仕返しになる。
 日本の高校でも、日本語がわからず、女子のグループに入れなかった。いじめを受け、椅子に画びょうを並べられた。職場でも「中国人」と差別されたが、負けずにそれをバネに頑張りました。
 27歳の時、全国ビルクリーニング技能競技会の予選で2位で、上司に「やさしさが足りない。道具を作った人の気持ちを考えて。」と言われ、心を込めて拭き、道具や周りの人に感謝するようにしたら優勝した。そこから本格的にこの仕事に興味を持ちました。
 いじめられ、他人が嫌なことを言っても、「そんな権利はない」と思えばいい。自分を守り、自分に優しくして「言い返せなかったけど、よく我慢した」と思えば死なない。「頑張った自分にご褒美でおいしいものを」と考えるのもいい。余裕がないと他人に優しくできません。
 大人になると、いやなこともあるけど、楽しいことのほうが多い。せっかく生まれたからには、楽しみを増やし、人生を目いっぱい生きたいですね。


                   京都新聞023.11.24 金 夕刊 記事 内容要約


  ノート
 日本人はウチとソトを峻別し、ソトに対しては厳しい。(共同体はみんなそうだが。)とりわけ、日本より下と思う国の人間には厳しい。日本の上下社会の反映である。
 新津さんも父親が日本人、母親が中国人で、中国では日本人だからと、日本では中国人だからと、いじめられた経験がある。かつての「在日」と同じだ。
 新津さんが偉いのは、日本のいいところを日本人以上に虚心に学び、自分を信じて、自分を守り、自分に優しくしたことだ。「あるべき、理想の自分」で「現実の、みじめな自分」を断罪して自殺しなかった。
 中国残留孤児も第三世代、第四世代の時代になっている。こうした新津さんのような人が国籍を超えて、日本に活力を与えてくれている。
 インドネシアやフィリピン、ベトナム、東南アジアから来る技能実習生が日本で生きていく一つのヒントになる事例である。もちろん優秀な人はごく一部だが、その優秀な人の周りに輪ができることで、ずいぶん、状況は変わっていくと思う。日本人もそのことで刺激を受けて、すでに根拠のない先進国=日本という観念を打破できることを祈る。


                          2023.12.8    金曜日

















                        2023.12.8    金曜日

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