藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

鶴 つる

  

  鶴
 10 月にシベリアや蒙古から日本に飛来し、翌年 3 月に帰って行く冬の渡り鳥。日本では長寿を象徴する動物として尊ばれ、祝い事の図案などによく使われる。折り紙の千羽鶴は病気の回復と長寿を祈って病気の人に贈られる。鶴の生息環境を保護する運動も盛んで、鶴は環境保護の象徴となっている感がある。


  ノート
 鶴はなぜつるというか。「つー」と一羽がやってきて、もう一羽が「るっ」と止まったから。そういう落語がある。
   散髪屋で物知りの男の噂を聞きつけ、問答に来たアホの男。「南京虫は脚気になる 
  か」「トンボはめばちこ(物貰い)を患うか」などを聞くが、常識的なことを聞けとた
  しなめられる。 それではと、散髪屋にあった掛軸の絵の鶴について尋ねると、昔は
  「首長鳥」と呼んでいたと聞かされ、重ねてなぜその後「つる」と呼ぶようになったか
  を尋ねる。
   そこで、鶴が唐土(もろこし)から飛んで来た際、「雄が『つー』っと」、「雌が 
  『るー』っと」飛んで来たために「つる」という名前になったと教えられる。
この男が 
   実は嘘だと言うのも聞かず仕舞いに、今、仕入れたばかりの知識を町内に披露しに行
  くアホの男。
   訪れた先で、いざ披露。「つる」の由来について半ば強引に教えるも、「雄が『つる
  ー』っと」と言ってしまったために困り果てる。 一旦物知りの男のもとへ戻り、再び
  レクチャーしてもらう。 今度は「雄が『つー』っと来て『る』と止まった」と言って
  しまったため、苦し紛れに「雌が黙って飛んで来よった」。
落語「つる」(上方版)(ウィ
  キペディア閲覧)


  丹頂鶴を珍重し、日本画でよく画材とされている。
 鶴亀、鶴亀とまじないのように言って、不吉なことの到来を防ごうとする。昨日の寅さんで友人の結婚式に臨んでおいちゃんとおばちゃんが鶴亀、鶴亀と唱えていた。言霊信仰である。日本人には、不吉なことを言うと、それが実現してしまうという考えがあった。文化というのは、半分は前代のものを踏襲しているのだから、あながち馬鹿にしたものでもない。「迷信」とか「非科学的」といって批判するのは、文化についての教養がないのである。科学信仰の反映とも言える。もう古いね。
 鶴や亀を重んじるのは、道教の影響でもある。蓬莱山という地名もそうである。鶴は千年、亀は万年。不老長生を重んじる道教は日本では仏教に押されて流布しなかったと言われるが、地名、物の名などに痕跡が残っている。鶴ヶ城、折り鶴、鶴太郎などそうであろう。片岡鶴太郎は朝の連続テレビ小説で渋い役を演じている。


                              2022.8.14     

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