藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

高橋まつりさんと幸美さん

        


電通過労自殺7年  京都新聞 2022.12.26 月  夕刊記事
   大要
   電通の新入社員高橋まつりさん(当時24)が長時間労働やパワハラに苦しみ、自殺してから25日で7年となった。母親の幸美さん(59)が手記を公表し「命より大切な仕事はない。」と訴えた。
 現在、がんで闘病中という幸美さん。「元気になって、誰もが安心して働ける国になるよう、まつりとともに力を尽くす」と決意を記した。
 手記では、連日の深夜残業や徹夜勤務を強いられ「いつ寝ればいいのかわからない」「体が震える」と漏らしたまつりさんり姿を振り返っている。「はじけるような笑顔、『お母さん大好き』と抱きしめてくれたあのぬくもりを決して忘れない」と心情をつづっている。


    ノート
 まつりさんはアイドルのような美形である。女性で非常にできる場合は同性からも嫉妬され、いじめの対象になる場合があり、上司も訴えをのらりくらりとかわして、相手にしない場合もある。
 まつりさんは東京大学に授業料免除制度があると知り、猛勉強して現役合格した。 どうやら母子家庭で、年収は400万以下だったようである。(そうでないと、授業料免除の基礎資格がない。)就職活動の履歴書にも「逆境に強い、強靱(きょうじん)なストレス耐性」と長所を記すほど、前向きで努力を欠かさない人だったということである。そういう人間は、周りから浮いてしまうこともある。嫉妬する人間もたくさんいる。何をそんなに頑張っている、うざい奴だ、といじめの対象になる。
 中根千枝(1967)『タテ社会の人間関係』講談社は個人の資格より集団の場(自分の属する職場、会社、官庁等)を重んじるのが、日本の「集団主義」のあり方であると述べている。その集団は時に「いけにえ」を求める。「いじめ」も同じ構造である。そうやって、日ごろのうっぷん晴らしをみんなでする。ゲスの足の引っ張りである。
 まつりさんは、精いっぱい、職場になじもうとして、頑張ったのだろうが、それなら、もっとどこまで頑張るか試してやろうという輩もいる。世の中には、信じられないくらい、人の不幸などなんとも思わない人間(最近の言葉で言えば、サイコパス)、人を陥れて喜ぶ人間もいる。


 讒言 ざんげん という言葉がある。ありもしないことをでっちあげていいふらす ことである。上司というのは、そういうときのための安全装置として存在するのに、上司が知らん顔というのは最近、日本でよくあることのように思う。以前の日本人なら、上司が面倒を見る、責任をとるということは当たり前だったが、現在ではそういうことは希薄になり、自分のことだけで精いっぱい、自分の保身しか考えないというのがほとんどのようだ。これもアメリカ化の一面か。
 かくいう私もかつてひどい目に遭ったことがあるから、まつりさんのことは他人事とは思えない。不当な目に遭い苦しむと、そうした思いを持つようになる。
                        


                                                                                                 2023.1.2      月曜日

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