藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

千人針  忘れてはならないが、蘇らせてはならない言葉 永田和弘

                千人針


千人針  忘れてはならないが、蘇らせてはならない言葉 永田和弘 京都新聞 2023.3.19 朝刊  天眼 てんがん
    大意要約
 NHK全国短歌大会の表彰式が先日、行われ、9人の選者の一人、永田和弘氏は今年の題詠の題「千」の特選に次の歌を選んだ。


 千羽鶴、千人針も役立たぬそんな事皆わかっていたのだ


 千人針の布を贈って銃弾を防げるはずがないのに、みんなそんなことを知っていて、誰もそれに異を唱えることができない時代があった。千羽鶴は一種の祈りとして今も生き続けているが。
 千人針は今や完全に死語だが、「忘れてはならないが、蘇らせてはならない言葉」の筆頭だろう。千人針の目的は、①兵士たちを鼓舞すること②銃後に残る国民の意志を統一し、厭戦や反戦の芽を摘むという効果であり、役割である。
 戦争指導者にとって最大の敵は、戦っている相手国より、内なる戦争反対の声であった。私、永田和弘は、この戦争の早期終結のカギは、ロシア国内で戦争に反対する声が無視できないまでに広がることだと思う。しかし、ロシアにはロシアなりの「千人針」があり、死んでいく兵士を思うと、戦争そのものを否定するのがはばかられるのだろう。政府・政権より、お隣さん、隣組の目が怖いのだ
 今の時代に「千人針」か゛復活することはないだろうが、皆を同じ方向に駆り立てる抵抗できない言葉の台頭には注意深くありたい。
 政府は昨年12月16日、「安保関連三文書」を公開し、岸田首相は会見で「国民国家を守り抜くとの、総理大臣としての使命を断固として果たしぬく」と宣言した。「国民国家を守り抜く」という誰もが反対するのが難しい標語が幅を利かせ始める社会の怖さをしっかり認識すべきである。


     ノート
  永田和弘氏久々のヒットである。本質を衝いている。「国民国家」つまりNation States
のNation 国民のソフト面の問題(精神的一体感とはつくられたものではないのか)、States 国家のハード面の問題(領域の画定に軍隊の保持が必須であること)にまで踏み込んでもらいたかったが、それでは京都新聞のデスクが載せさせないのではないかと思う。
 今、問題は「国民国家」の功罪を明らかにすることである。ゲスマスコミも大学のセンセイも誰もそのことを言わない。金がもうからなくなるからだろう。


                         2023.3.24   金曜日

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