儒教と道教

2023/04/24 00:00

　　　　儒教と道教　
　儒教は礼によって、人を規制しようとする。人間社会での秩序の重要性を知悉している。　
　道教は儒教だけでは息苦しいので、息抜きとして、存在した。老荘関係の本は、こっそり家で読む本である。　
　福永光司氏は道教の日本への伝播を新しく研究した。飲食男女が道教の基本である。剣道、柔道の「道」は道教からである。
　福永光司氏はは道教には唯物的道教と哲学的道教があり、岡倉天心は哲学的道教として「茶道」を考えたとしている。(既述)
　『荘子』の包丁篇の融通無礙。混沌寓言から湯川秀樹博士が中間子論を考えついたのは、有名なエピソードである。知らず知らずに道教は我々の世界に影響を与えてきた。「天皇」という言葉も道教由来である。戦前は、それではまずいということで、道教の研究はタブー的であった。

　　　参考資料
「湯川秀樹の素粒子理論研究と中国の老荘哲学」
大連大学日本研究所蔡明哲
「『荘子』，「内篇」の「混沌寓言」で出ているもので，それは古人が想像した
世界の万物がまだ形成されていない自然状態を示している。老子は「混沌」を「気」と言っている。
　『老子指帰』では混沌をつぎのように述べている。混沌は無軽無重，無上無下，無陰無陽，無表無裏なものとして無限の空間に瀰漫している茫々として，はっきり見えない混々沌々とした物である。これらの混沌の特性は模糊性と全体性である。
　湯川はこの「混沌」の属性を素粒子論研究の方面から理解している。「荘子といえば混沌ということばがあります。これなど，たいへん，素粒子が飛び回っている世界みたいな感じもあるわけですね。
　へたに目鼻をつけると，混沌は死んじゃうということを荘子はいっていますが，それは解釈しだいで，受け取る人の連想の仕方によって違っているが，何か現代の素粒子の世界に，やはりヒントを与える
ものを含めているように私には思われる。思想の歴史は不思議なものです」14 〕と言っている。
　湯川は「混沌」を素粒子の世界に類比して，その中から混沌の総体性と模糊性が素粒子の状態の不確定性，総体性，及び確率特性に似ていることを理解したのである。原子の世界から素粒子の世界へと探究を進めるにつれて，有と無の区別はますます模糊となって来たのである。一つの素粒子が消えると新しい質の違う素粒子が出現する。そういう転化が絶えず起こっている。それが素粒子の世界である。さらにもっと進んでさまざまな素粒子の背後にある世界まで思いをめぐらすとそれはむしろ混沌という概念の方がより適当な世界であるように思われる15）。
　たしかに素粒子世界の一つの重要な特徴は，湯川が言ったとおりその状態の不確実性と混沌性で湯川が言ったとおりその状態の不確実性と混沌性であ
る。即ち「存在」と「非存在」の間には分明な限界と厳格な区別がない模糊性である。これは素粒子が確率模型として異なる位置に存在できる傾向性があり，一つの特殊な物理的実在として存在と非存在の間にあるからである。ここでは「存在」と「非存在」「有」と「無」の分明な限界と厳格な区別は，すでに朦朧となっている。だからわれわれが固定的な対立概念を表わす術語で素粒子状態を描写する時，も早この粒子は確定的な位置に存在するとも，存在しないともいえない。」