藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

和辻哲郎の『古寺巡礼』を手に学徒出陣の前に奈良の古寺を歩いて日本の伝統に思いをはせた旧制高等学校生

      

 和辻哲郎の『古寺巡礼』を手に学徒出陣の前に奈良の古寺を歩いて日本の伝統に思いをはせた旧制高等学校生
 
  和辻哲郎は間接的な戦争協力者でないか。近代欧米と戦いに赴く学徒に心の寄る辺としての日本の伝統への回帰=古寺巡礼という道を指し示した和辻哲郎の『古寺巡礼』はそういう本として受けとれないだろうか。現在の人はその残り香をかぐように古都奈良を訪れるのだろうか。現在の無意識な行為は過去の行為に裏付けられていることがある。こうした研究が今、必要とされている。ロシアとウクライナの戦いもそうした視点から考える必要がある。例えば「復讐」という観点から両国の戦いを考えるとどうなるだろうか。専門家に伺いたいところである。多分そういった教養はないから、現状分析だけくどくどと繰り返すのだろう。

 現在の事実の中に過去の痕跡を見いだし、現在の兆候の中に未来の結果を予測するのが本来、歴史のするべきことだ。

                               2023.10.5 木曜日


   参考資料  古寺巡礼 (和辻哲郎) - Wikipedia  閲覧 2023.9.28
「この書は大正7年の5月、2,3の友人とともに奈良付近の古寺を見物したときの印象記である。」と、著者による昭和21年7月付けの改版序文にある。
 初版・改版
1918年8月から1919年1月まで和辻は岩波書店の雑誌『思潮』に『古寺巡礼』を6回連載した。
1919年(大正8年)5月、岩波書店から初版単行本を出版[注釈 1]。
1923年の関東大震災で版が焼け、翌1924年9月新版。
1947年3月岩波書店から改訂版を出版。現在普通に読まれるのはこの版である[注釈 2]。
内容
以下の太字の章数は1947年版の章数。太字の訪問地は原文の章題ではない。内容文の章数は初版の章数。


1 東京で
1 アジャンターの壁画の模写を見る。仏徒の壁にふさわしくない蠱惑的な女。
2 京都で
2 実家で父は、お前の今やっていることはどれだけ役に立つのかと言い、返事ができなかった。
3 南禅寺畔の叔父の家で。南禅寺の境内から流れる水が水車を回す。
3 京都の博物館で
4 仏画はガンダーラからシナへ、東へ来るほど清らかに気高くなる。
4 奈良へ
5 汽車で奈良へ。時々天平の彫刻を思わせるような女の顔に出逢う。
5 新薬師寺
6 新薬師寺の薬師像。木彫でこれほど堂々とした作は、ちょっと外にはない。
6 浄瑠璃寺と東大寺
7 平和な村の中の浄瑠璃寺。東大寺の戒壇院の四天王と、三月堂の不空羂索観音。
7 奈良国立博物館
8 夕食を食べながら今日見た芸術品について論じ合う。
9 奈良国立博物館。博物館の陳列の方法は何とか改善してほしい。
10 聖林寺十一面観音[注釈 3]。作者は不明だが、われわれの国土のものと感ずる。
8 奈良国立博物館
11 推古天平の最も偉大な作品は、同じくみな観音である。
12 百済観音。インドや西域の文化を漢人が咀嚼した様式。
9 奈良国立博物館
13 興福寺の諸作は巧妙だが深さを伴っていない。法隆寺の四天王は気持ちのいい芸風。
14 『日本霊異記』は天平の人の心持ちを表現している。
16 法隆寺の金堂の天蓋から取りおろした鳳凰や天人が特に興味深い。
10 奈良国立博物館
15 伎楽面。伎楽の楽と舞がどういうものか、『東大寺要録』や『供養記』から想像する
[注釈 4]。


11 法華寺
17 法華寺の蒸し風呂。光明皇后が千人の垢を洗ったと『元亨釈書』は伝える。
12 法華寺
18 法華寺は大倭の国分尼寺で、光明皇后の熱信から生まれたものらしい。
19 法華寺の十一面観音。光明皇后をモデルに問答師が作ったと『興福寺濫觴記』にある。
13 法華寺
20 天平時代ほど女の活躍した時代はほかにない。
21 弘仁期の僧尼の気風は『日本霊異記』から知られる。
22 尼君の血色はまれに見るほど美しかった。
14 唐招提寺
23 唐招提寺の金堂。屋根の重さと柱の力との間の安定した釣り合い。
24 金堂盧舎那仏の右の脇士である千手観音は、手の交響楽をなす。
25 講堂は奈良京造営の際の建築である。ただし鎌倉時代の修繕で構造も変わった。
15 唐招提寺
26 鑑真の日本渡来。『鑑真東征伝』によれば随行した弟子は24人。
27 鑑真の将来した品物は多い。その目録。
28 奈良時代の日本は文化を輸入する国から自作する国へ変わる。
16 薬師寺
29 薬師寺には東洋美術の最高峰が控えている。
30 金堂の薬師如来。とろけるような美しさ。柔らかさと強さとの抱擁。
31 この三尊の制作は天武帝から持統帝の時代。帰化人や混血人によると思われる。
32 白鳳時代の東塔。東院堂の聖観音。一種の生気が放射して来るかのよう。
17 薬師寺
33 聖観音の作者は西域人ではなかったろうか。ガンダーラ美術の間に育ち、シナの素朴さを持つ。
34 木下杢太郎は薬師如来と聖観音に感動しなかった。それへの反論。
35 S氏の話。天平の仏工が台座の内側に落書きを残した。写しを見せてもらった。
18 奈良国立博物館
36 博物館の玄関脇の応接室の壁に古画をかけて見せてもらった。
37 法華寺の阿弥陀三尊[注釈 5]。単純でありながら微妙な深味。なにか永遠なもの。
19 奈良国立博物館
38 薬師寺吉祥天像[注釈 6]。地上の女であって神ではない。美人画として見れば非の打ちどころがない。
20 当麻寺
39 当麻寺の曼荼羅。解脱を思わせるものではなく、現世の享楽の理想化。
40 汽車で大和三山の間を通り、三輪山の麓から北へ、奈良市に戻った。
21 東大寺
41 月夜の東大寺南大門と大仏殿。月明に輝く三月堂。
22 法隆寺
42 法隆寺。五重塔の美しさをあらゆる方角から味わった。
23 法隆寺
43 法隆寺金堂壁画[注釈 7]。東洋絵画の絶頂。真実の浄土図。アジャンター壁画との相似。
44 橘夫人の厨子。そのなかの阿弥陀三尊。推古式と西域式の融合。
24 法隆寺から中宮寺へ
45 夢殿秘仏[注釈 8]。200年以上の秘仏をフェノロサが開かせた。
46 中宮寺の菩薩。なつかしいわが聖女。「たましいのほほえみ」を浮かべる。
47 かつてこの寺で、この観音の侍者にふさわしい尼僧を見たが、今回は逢えなかった。



                             2023.10.5   木曜日















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