藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

英雄たちの選択「千年のまなざしで中国をみよ 内藤湖南が描いた日本と中国」 放送日 3月16日(水) [BSプレミアム] 後8:00

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英雄たちの選択「千年のまなざしで中国をみよ 内藤湖南が描いた日本と中国」
放送日 
3月16日(水) [BSプレミアム] 後8:00


出演者ほか
【司会】磯田道史,杉浦友紀,【語り】松重豊,【出演】高橋源一郎,岡本隆司,安田峰俊


内容
ジャーナリストから京都帝国大学教授となった内藤湖南。湖南が生きた時代、中国では革命が起こり清朝が崩壊。湖南は現地に赴き取材するなかで、中国の本質を知る必要があると考えるようになる。そこで歴史をさかのぼって国の成り立ちを探り、今日でも高く評価される学説を打ち立てた。その内容とは。中国、そしてあるべき日中関係を生涯のテーマにした湖南。今日の私たちにも重要な問いについて、各界の専門家が語り合う。
https://www6.nhk.or.jp/nhkpr/post/trailer.html?i=33466 閲覧。
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  高橋源一郎氏は、小説家。岡本隆司氏は歴史学者。とりわけ、清末が専門。安田峰俊氏はジャーナリスト。近年、中国関係のルポを精力的にものしている。以下、上記、内容に即して注釈を加える。
 「ジャーナリストから京都帝国大学教授となった内藤湖南。」→湖南はもともと、政教社系のジャーナリストで、志賀重昂、三宅雪嶺といった人たちと関係が深い。日本の長所による世界貢献という健全な国粋主義を目指した。秋田県の予備的師範学校を出ただけで、湖南は学歴がない。京都帝大教授になるのも、文部省が難色を示して、いったん講師になって、二年後に教授になっている。
 「湖南が生きた時代、中国では革命が起こり清朝が崩壊。湖南は現地に赴き取材するなかで、中国の本質を知る必要があると考えるようになる。そこで歴史をさかのぼって国の成り立ちを探り、今日でも高く評価される学説を打ち立てた。その内容とは。」→1911年 辛亥革命。清朝崩壊。袁世凱が孫文との裏取引(清朝を崩壊させたら、袁世凱を大総統にする)で大総統になり、反動政治を推進する。袁世凱は妾が20人ぐらいいた。湖南は中国の本質を「国家と社会の乖離」と「自治組織の発展」にあるとした。中国の近代は北宋に始まるとし、皇帝独裁と平民の経済の発展にその特質を見出した。いわゆる唐宋変革論である。この考えは、1842年、アヘン戦争を中国近代の始まりとする欧米の中国史観とは著しく異なる。宮崎一定、三田村泰彦らが湖南の学説を継いだ。民間の自治組織に将来性を見出し、曽国藩などの地方の指導者に希望を見出した。
 「今日の私たちにも重要な問いについて、各界の専門家が語り合う。」→高橋源一郎氏は湖南の文化中心移動説が日本の中国侵略を擁護する面があるととられても仕方がない面があるという。また、中国は日本にとって、自分を見つめるための鏡であるという。日本の作家でアメリカのパール・バックの『大地』のような、中国民衆の息吹を書いた小説家は一人もいないと事実を述べるにとどめていたが、要は当時の文学者は中国、中国民衆など蔑視していたのである。芥川からしてそうである。谷崎は独特の中国観を持っていたが…。岡本隆司氏は湖南の専門の枠を超えた研究を高く評価する。中国を変な国、独裁国家と決めつけるだけでいいのかと疑問を提示する。今こそ、中国を動かす原理を知る必要があるという。安田峰俊氏は、現在でも貴州省などでは、国とは関係のない自治組織が警察の代わりをしているところがあるという。中国共産党は、皇帝独裁の欠点を克服している面があるとする。よくぞ言った。めずらしい中国共産党の肯定的評価。勇気いるねえ、こういうこと言うのは。
 磯田道史氏は明治・大正はようやく日本が中国の宋代に入った時代で、平成・令和は明・清の時代に相当するのではないかと締めくくった。さすが磯田道史氏!国際日本文化研究センターの将来はあなたにかかっている。


 湖南は1914年『支那論』で中国も世界の大勢で共和制へ向かうとし、その原動力を民間の「自治組織」に見出した。1924年の『新支那論』では、アメリカの中国への進出、教育事業への進出を警戒し、アメリカの中国の歴史の無視を批判した。
 湖南は、政治・軍事は程度の低い者がすることで、中国は芸術を中心とする国になればいいと言った。

 歴史のないアメリカには、ソ連のことも中国のこともわからない。金,ものだけの国。それで一番になれなくなる恐れがあると、何があってもそれを阻止しようとする。ゲス大国アメリカ。武器供与でまたウクライナで一儲け。アフガン・イラクと同じ。武器産業トップがほくそ笑むアメリカ。18日、米中オンライン協議が行われる。さあ、習近平とバイデン、何を話し合うか。


                              2022.3.17  木

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