藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

漱石 『虞美人草』内容 登場人物 ノート

          

   

 ヒロイン 藤尾を思わせる三越百貨店のポ 

  スター 北川扶生子(2020)p.38
 
 漱石 『虞美人草』あらすじ 登場人物 

     ノート
 あらすじ  Wikipedia 閲覧
 甲野藤尾(こうのふじお)は虚栄心の強い美貌の女性。兄の欽吾が神経衰弱(鬱病)療養により世間とは距離を置き、家督相続を放棄しているのを良いことに、亡き父親の洋行帰りの品で遺品でもある金時計(甲野家の財産を象徴している)と自らの美貌で、小野と宗近という二人の男性を天秤にかけ、彼らが狼狽する様を楽しんでいた。欽吾にとっての継母、藤尾の実の母親は、口では継子の欽吾の身を案じているものの、いずれは藤尾と夫となる者が亡夫の遺産を全て相続すると考えていた。また、藤尾は自分を慕い訪ねて来る小野に講釈をさせては、独自の解釈で小野の心を誑かしていた。
 文学士小野清三恩師井上狐堂の愛娘である小夜子を妻に娶るという口約束を交わしていた。老い衰えた井上と小夜子は生活に窮し、小野を頼って京都から上京する。藤尾への恋慕を抱える小野は義理と人情の板挟みに密かに苦しんでいた。
  一方、快活で剛毅な性格の宗近(むなちか)(はじめ)は外交官の試験に及第するため勉学に励んでいた。若くして隠棲している欽吾の身を案じ、しっかり者の糸子と父親と共に生活を送っていた。
 ある日、藤尾、欽吾、宗近、糸子ら4人は上野恩賜公園で行われた東京勧業博覧会見物に繰り出す。一方、小野は井上と小夜子を案内していたが人ごみに疲れた二人を休ませるためカフェで休憩している際に藤尾たちにその様子を目撃された。藤尾は後日小野をめぐりくどく問い詰める。一方、小夜子は博士論文の提出を控えているという小野の変貌ぶりに驚いていた。
 欽吾は宗近宅を訪ね、糸子と世間話をする。糸子は欽吾に思いを寄せていたが、欽吾は自分には養えないと婉曲に断る。藤尾に対する憧れを口にした糸子に、欽吾は「藤尾のような女がいると殺される人間が5人はいます」と打ち明け、「貴方はそのままでいてください」と糸子に語る。欽吾は改めて藤尾の気持ちを確認するが、藤尾には宗近の嫁になる意志はなく、小野に固執していた。
 小野は知人の浅井を通じて小夜子との縁談を断るつもりでいた。一方、宗近外交官の試験に及第したことを糸子に報告するが、つれない態度をとられる。欽吾の嫁になる気はないかと尋ねると糸子は泣き出した。糸子は欽吾に恋慕しており、欽吾も糸子に好意はあったがまるでなにもかも諦めているように断った。
 宗近は報告のためと出家する素振りの欽吾の心境を尋ねるために甲野家を訪れる。だが、藤尾のもとに小野が訪れていることを目撃する。宗近が欽吾を問い詰めると、欽吾は継母の真意に沿うように自分が悪者になって家を捨て、財産の全てを藤尾と継母に委ねるつもりだと吐露する。そんな欽吾に宗近は糸子を娶ってくれと頼み込み、世間の全てが欽吾の敵となっても糸子だけは味方になると欽吾を説得する。
 一方、小野に依頼された浅井は井上を訪ね、博士号取得のための勉強を理由に小夜子との縁談をなかったことにして欲しいと頼み込む。その替わりに生活の援助はするという小野の言葉を浅井が伝えると、井上は激昂し、人の娘をなんだと思っていると浅井に怒りをぶちまける。小夜子は浅井と父のやり取りを聞いて落涙する
 井上の態度に悩んだ浅井は宗近に相談する。その頃、小野は藤尾と約束した駆け落ちを果たすべきか迷っていた。そこに宗近が乗り込む。そして人の道を説き、真面目になるべきだと懇々と説得する
  欽吾は甲野家を出る意志を固める。糸子が迎えに来ていた。父の肖像画だけを持って家を出ようという欽吾に継母は世間体を口にして押し留める。其処に宗近と小野、小夜子が連れだって現れる。そして小野が連れてきた小夜子こそが自分の妻となる女性だと紹介する。一方、待てども待ち合わせに現れない小野に業を煮やした藤尾は甲野家に戻り、小夜子を伴った小野に対面。謝罪された上で小夜子が自分の妻となる女性と紹介される。藤尾は宗近に見せつけるように金時計を取り出すが、宗近からこんなものが欲しくて酔狂な真似をしたのではないと突き放される
藤尾は毒をあおって自死した。


  登場人物
 甲野欽吾  義理の妹=藤尾
 甲野の親友=宗近一(むなちか はじめ)
 小野清三=藤尾の英語の家庭教師  
 小野の恩師 井上孤堂  その娘 小夜子(さよこ)


  ノート
 小野と宗近と藤尾の三角関係がメイン。小野が魅力的で打算的な藤尾をとるか、恩師の娘、小夜子をとるかが焦点。藤尾という新しいタイプの女性=自分の好きに生きようとする女性を自殺させるところに漱石の考えがある。文学士、小野清三のモデルは漱石の東京帝大での教え子、厨川白村(くりやがわ はくそん)京都帝大教授と言われる。厨川の著『近代の恋愛観』は自由恋愛を説き、ベストセラーとなった。厨川著『苦悶の象徴』は苦悶も文学たりえると説き、中国の魯迅が中国語に翻訳して、北京大学などの文学創作の授業で、教材にしている。厨川は関東大震災のとき、別荘のある鎌倉にいて津波に吞まれて、泥が気管支に詰まり、死去している。まだ40代であった。
 柄谷行人の『虞美人草』論は明日、内容要約とノートを書きます。乞うご期待。

                               

           2022.4.12  火

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