藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

 武士道  ぶしどう

     

 武士道
     武士道は鎌倉時代から発達し、江戸時代に大成した武士階層の道徳体系である。儒教的思想に裏付けられている。忠誠・犠牲・信義・廉恥(れんち)・礼儀・質素(しっそ)・倹約(けんやく)・尚武(しょうぶ)・名誉などが重んじられた。武士には支配階級となる前、もっぱら戦うことを職業としていた時代、潔(いさぎよ)く死ぬという考え方、死を讃(たた)える考え方が大きな比重を占めていた
  武士道の特徴の一つは尚武(しょうぶ)・名誉であり、それは相手に勝つことを意味した。ただし、力づくで他者を圧倒するのではなく、自分自身に勝つことによってのみ他者に勝ちうるという、精神的(せいしんてき)鍛錬(たんれん)を含んでいた。自己に勝つとき、はじめて強さは形成されると考えるから、質素(しっそ)・倹約(けんやく)などが重要視された。(拙著 私家版(2018)所収『日本文化概論Ⅳ―キーワード編―』より)


   ノート
 新渡戸稲造『武士道』は日本の武士道を欧米に紹介する目的で1899年にフィラデルフィアで刊行された。思想家あるいは教育家として著名な新渡戸稲造が、日本人の道徳観の核心となっている「武士道」について、西欧の哲学と対比しながら、日本人の心のよりどころを世界に向けて解説した著作で、新渡戸自身の代表作となっている。内村鑑三の「代表的日本人」、岡倉天心の「茶の本」と並んで、明治期に日本人が英語で書いた著書として重要である。執筆は、カリフォルニア州モントレーで行っていた。出版後、1908年には櫻井鴎村によって日本語にも翻訳され、さらに岩波書店から刊行された矢内原忠雄による翻訳が現在の定本となっている。一方、天皇陛下へのキリスト教徒の不敬を弾劾した井上哲次郎や『君が代』と『古事記』を英訳したバジル・ホール・チェンバレンなどからは内容を批判された(ウィキペディア閲覧)。
 現在、新渡戸稲造『武士道』を読んでも、武士道の漢語の概念があまり心に響いてこない。日本人はそうした誠や勇といった概念を1945年から7年間のアメリカ占領支配で忘れてしまったのだろうか。意味内容空疎なカタカナヘラヘラ日本語が漢語を駆逐しようとしている現在、日本人はどこへ行くのであろうか。
 内村鑑三の『代表的日本人』や岡倉天心の『茶の本』は、現在でも心に訴えてくるものがある。内容に新鮮なものがある。


                              2022.5.27    金

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