藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

短歌    たんか

     

 短歌    たんか
 短歌は和歌の一形式で、5・7・5・7・7の31音によって構成される定型詩である。短い叙情詩で、前半の5・7・5と後半の7・7の2部構成である。8世紀に編纂された日本最古の歌集である『万葉集』にも、すでにこの形式のものが多くみられる。短歌の特徴であり不可欠な要素は言外に感じられる(=文字には表されていない)余情  よじょう をその中に含ませなければならないことである。余情や深い 趣おもむきを連想させるのが優れた短の条件の一つであるといえる。


あおによし奈良の都は咲く花の匂うがごとく今盛りなり   小野おのの老おゆ
「青あお丹によし」は「奈良」に係る 枕 詞まくらことば。平城京の栄えている様子を花
にたとえて詠んだ短歌。都を褒めることで時の為政者を讃えている。
万葉集所収。www.edu.city.kyoto.jp/hp/keitoku-s/tanka.ver4.pdf



秋来きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる
                         藤原敏行 ふじわらとしゆき
 平安初期の歌人。書家としても有名。秋の訪れを風に感じるという斬新な発想がすばらしい短歌。立秋の頃の心持ちを表すのに今もよく用いられる歌。立秋は夏至と秋分のちょうど中間に当たる日。この頃から少しずつ秋の訪れが感じられるはずなの だが,温暖化の進
行した現在では秋の気配を感じるのが難しくなってきた。
www.edu.city.kyoto.jp/hp/keitoku-s/tanka.ver4.pdf


東風(こ ち)吹かば匂いおこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな
                        菅原道真                                                                                                                           すがわらのみちざね
www.edu.city.kyoto.jp/hp/keitoku-s/tanka.ver4.pdf
                              (拙著 私家版(2018)所収『日本文化概論Ⅳ―キーワード編―』より)


        ノート
 短歌は俳句と違い、季語はいらない。俳句に対する川柳のように、短歌に対する狂歌がある。以下のごとくに。
白河の清きに魚のすみかねて もとの濁りの田沼こひしき
寛政の改革の際に詠まれたもの。白河は松平定信の領地。定信の厳しい改革より、その前の田沼意次の多少裏のあった政治の方が良かったことを風刺している。大田南畝作という評判もあったが本人は否定した。別の寛政の改革批判の狂歌である「世の中に蚊ほどうるさきものはなし ぶんぶといふて夜も寝られず」も 「詠み人知らず」とされているが、大田南畝作の説が有力である。
泰平の眠りを覚ます上喜撰 たつた四杯で夜も眠れず
黒船来航の際に詠まれたもの。上喜撰とは緑茶の銘柄である「喜撰」の上物という意味であり、「上喜撰の茶を四杯飲んだだけだが(カフェインの作用により)夜眠れなくなる」という表向きの意味と、「わずか四杯(ときに船を1杯、2杯とも数える)の異国からの蒸気船(上喜撰)のために国内が騒乱し夜も眠れないでいる」という意味をかけて揶揄している。
名月を取ってくれろと泣く子かな それにつけても金の欲しさよ
下の句を「それにつけても金の欲しさよ」に付け合うことで、どんな風雅な句も狂歌の体に収斂させてしまう言葉遊びを「金欲し付合」という[1]。江戸中期に流行した。
世の中に寝るほど楽はなかりけり浮世の馬鹿は起きて働く(読み人知らず)
道教、足るを知ること、等に通じる高尚なところもあり、怠け者の自己弁護のようなところもある有名な歌。(ウィキペディア閲覧)


 歌は世につれ 世は歌につれ 花の命は短くて 苦しきことのみ多かりき
 五七調というのは日本語のリズムに合うのであろう。その言語にはその言語固有のリズムがあるように思う。リズムと言えば、柳亭痴楽の「痴楽綴り方狂室(教室)」というのがあった。


柳亭痴楽の「痴楽綴り方狂室(教室)」


東京娘のいうことにゃ さの言うことにゃ
柳亭痴楽は いい男
鶴田浩二や錦之助 あれより ぐ~んと いい男
てなてなことを一度でも 言われてみたい 言わせたい
ああそれなのに この僕は
黒の紋付 扇子に袴
お札配りじゃあるまいし
1年365日 へらへら 笑っているのです
いっそ さらりと背広に着替え
今を流行りのセールスマン
隆(りゅう)と結んだ蝶ネクタイに
ふんわか香るポマード付けて 粋なセールスしてみたい
もしもし テレビはいかがです 予算がないからだめだわよ
そんならいっそ 洗濯機 たらいがあるからいらないわ
それでは奥さま 冷蔵庫 取っとく暇に食べちゃうわ
電気バリカンいかがです うちの親父はハゲ頭
こんなことだと最初から 判っていたなら
紋付袴 花婿姿と考えて
へらへらした方が 気が楽だ
恋に生きるも男なら 芸に生きるも男です とか何とか言いながら
気楽に べらべら喋りだす
芸道一途のこの姿
本当に痴楽な物語
痴楽綴り方教室(狂室)


 http://rakugo-channel.tsuvasa.com/tudurikatakyousitu-chiraku-4


痴楽綴方教室「恋の山手線」
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柳亭痴楽はいい男、鶴田浩二や錦之助、それよりもっといい男。
上野を後に池袋、走る電車は内回り、私は近頃外回り。
彼女はきれいなうぐいす芸者(鶯谷)、ニッポリ(日暮里)笑った
そのえくぼ、田畑(田端)を売っても命がけ、わが胸の内、
こまごまと(駒込)、愛のすがもへ(巣鴨)伝えたい。
おおつかな(大塚)びっくり、故郷を訪ね、彼女に逢いに
行けぶくろ(池袋)、行けば男がめじろ押し(目白)、
たかたの婆や(高田馬場)新大久保のおじさんたちの意見でも、
しんじゅく(神妙に?=新宿)聞いていられない。
夜よぎ(代々木)なったら家を出て、腹じゅく(原宿)減ったと渋や顔(渋谷)、
彼女に逢えればえびす顔(恵比寿)。
おやじが生きて目黒いうちは(目黒)、私もいくらか豪胆だ(五反田)。
おお先(大崎)真っ暗恋の鳥、彼女に贈るプレゼント、どんなしながわ(品川)
良いのやら、魂ちいも(田町)驚くような、色よい返事をはま待つちょう(浜松町)


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                               2022.6.3   金

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