藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

森林 森林は修験道の揺籃であり里山に連なる日本人の古里

  

               法 隆 寺


     森林
 日本の国土の 67%は森林である。降水量が多く、どこでも森林が生育する条件が整っていることによる。山岳地帯が国土の 61%を占めているのも森林地帯が多い理由である。日本列島が氷河期に氷河に覆われなかったために、ヨーロッパやアメリカ大陸温帯地帯に比べて植物の種類も豊富である。植林などの森林の管理も進んでいる。こうした条件の下 もと  で日本は木の文化を育んできた。奈良の法隆寺は世界最古の木造建築物である。



     ノート
 日本は木と紙の文化。仏像も経年変化した木造りのものを尊重する。中国やタイ、ミャンマーの仏像はキンキラキンである。安らぎと微笑み、アルカイックスマイル。広隆寺の半跏思惟像。ナームー。
 法隆寺の夢殿観音。その秘仏をフェノロサとともに1884年、明治17年にご開帳させて、実見した岡倉天心は「一生の最快事なりというべし」と『日本美術史』で述べている。廃仏毀釈、文明開化から17年、リメイクした日本主義が明治20年代に隆盛する先駆け的視察である。もっとも、夢殿観音は濃厚にコリア的、春風駘蕩の雰囲気を醸し出している。一陣の春一番が力強い春の意思的な到来を告げるように。かつてコリア仏像彫刻は日本の先達彫刻であった。
 日本の木と森の文化は、ひっそりと、自己主張することなく、無意識の献身で平野部の近代都市を支えてきたが、限界点に達して、川は氾濫し、土石流となって都市を襲う昨今。拝金主義の指導者は何等の根本的手立ても行わず、一時的な対処療法を行うのみである。のど元過ぎれば熱さ忘れる。
 夏が終わり、秋が今年もやって来る。晩夏に曼殊沙華の花が咲き、秋分の日が今年もやって来る。68回目の秋である。 


                               2022.8.27   土

×

非ログインユーザーとして返信する