藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

(1980)『動乱』高倉健 吉永小百合 初共演が売りだったが・・・。

     

  
(1980)『動乱』高倉健 吉永小百合 主演
 2022.9.7 BSP   午後1時―3時32分  放送
 高倉健と吉永小百合の初共演で話題を呼んだ作品。
 二・二六事件を背景に青年将校とその妻を描く。農村の借金のかたに身売りされる女性の薫(吉永小百合)=姉を救おうと脱走した部下の満田を弁護した宮城大尉(高倉健)は転属となった朝鮮で薫に偶然、出会う。薫は床芸者となって働かされていた。やがて、互いに惹かれて、日本に帰り、宮城の家に薫は住み込むことになる。肉体関係はない。
 宮城は皇道派の頭目と目され、嫌疑を受ける。農村は娘を借金のかたに売らねばならないほど疲弊していた。日本の満州侵攻も事実としてとらえるのみの描写。「おおみごごろ」を信じ、天皇を理想化して、二・二六事件を起こす宮城ら青年将校。決行前に、宮城は宮城前で土下座して、決行後は責任を取り切腹すると「すめらみこと」に誓う。二・二六事件後、反乱罪で、宮城以下16名は死刑に処せられる。ラストシーンは、吉永小百合との海でのかつての出会いの映像で終わる。
  高倉健と吉永小百合の初共演という話題だけの内容のない映画。歴史観が従来のものを踏襲しているだけで、皇道派を美化している陳腐なストーリー。二・二六事件には、事件後、天皇が気持ちをくんでくれなかったと、怒り狂って天皇を呪詛して死んだ青年将校もいる。それが危なくて映像にできないのなら、初めから二・二六事件といった難しいテーマを選ぶべきではない。日本の二・二六事件等、昭和の軍人を描いた映画はワンパターンで、脚本が稚拙なものが多い。もっと勉強して、心に訴えてくる脚本を書くべきだろう。「純粋な、悲劇の青年将校」というワンパターンの情調しか感じられない駄作映画ばかりである。
 この映画がつくられた当時、こうした過去の戦争美化に近いものが数本、作られたから、政治的保守ムード巻き返しのねらいが一部政界等の中にあったのかもしれない。戦争はもうかるから、軍需企業も関係していたのかもしれない。世は竹の子族とかなめ猫が流行った太平お気楽な時代である。もっとも、どんよりと澱(おり)のようなものが瀰漫していた時代である。1980年には松田聖子がデビューしている。デビュー曲は「裸足の季節」。二枚目が7月にリリースされた「青い珊瑚礁」。清新な歌声は今も印象に残っている。沖縄の珊瑚礁を連想する。


                          2022.9.8       木

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