藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

(1981)『息子』  山田洋次監督  ちょっと理屈っぽい

  (1981)『息子』  山田洋次監督
 BSで『息子』を放送していた。東北から出稼ぎに出て、江戸川区に住んで、東京のビル工事を25年間して、現在は東北地方に帰り農業をしている父親に三国連太郎。その息子の次男に永瀬正敏。次男は金属製造、運送の会社で、鉄の棒などを搬送している。搬送先の事務をしている聾啞者の娘、和久井映見に恋して、結婚することになるが、父親役の三国連太郎が次男のアパートを訪れて、二人は今までのしこりを解消して和解する。長男のマンションにも行くが、長男の嫁、原田美枝子の演技が上手で、『ちむどんどん』のオーナーの姿とは別の、義理の父親への気遣いの演技が光っていた。
 東京の高層ビルは、東北からの出稼ぎ人の労働でできたものである。山田洋次監督は、そうした苦労した側からの視点を持っている監督だが、時々、説教臭を感じることがある。本人は意識していないのだろうが、そうした臭いは好ましいものではない。映画は視覚、聴覚で情感に訴えるもので、理性、理屈で情感に訴えるものではない。感情、感覚、理性、直感。この四つで人は心を形成している。ユングの説。
 原作は椎名誠。この人は『さらば 国分寺書店のおばば』という本を書いていて、エッセーのような、小説のような面白いタッチのものを書く人である。テレビCMは本当にその商品が好きな人がつくったCMを見てみたいと言っていたのが印象的である。金のために転ぶ太鼓持ち俳優がほとんどだ。誰もそれを批判しない。


                          2022.9.14     水

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