藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

土佐尚子氏の「現代のことば」「日本文化と日本美とは?」

 

  土佐尚子氏の「現代のことば」「日本文化と日本美とは?」2022.11.11 金曜日 京都
            新聞 夕刊
 「現代のことば」は京都新聞の夕刊に掲載される、京都関係の文化人、知識人の見識がうかがえる記事である。京都新聞の特徴ともいえる。これがなければ、ただの地方新聞だと言っても過言ではない。
 さて、土佐尚子氏(芸術家、京都大学防災研究所特定教授)の「現代のことば」「日本文化と日本美とは?」では、日本文化を中国文化の影響を受けながらも、中国文化を純粋化し不必要なものをそぎ落としたミニマリズムの文化へと昇華してきた歴史を持つとしつつも、日本文化の外国からの理解の可能性も認め、19世紀の日本文化・アートの西洋での受容であるジャポニズムをその証左としている。
 日本美の本質は老荘思想の根幹をなす人間と自然の一体化を説く思想、いわゆる東洋一元論にたどり着くとし、日本美とは自然の中に潜む日本人の感性に訴える繊細で洗練された部分を取り出したものであり、自然現象・物理現象と極めて密接な関係を持っていると言ってよいだろうという文でエッセイを締めくくっている。
 土佐氏は、和辻哲郎の風土論を認めている。風土の自然現象・物理現象の重要性を認めている。しかし、同時に、外国の人間にもそれを理解することが可能であるとし、ジャポニズムの例を挙げている。これこそ、真の相互作用というものである。
 ただ、現実の世界はアメリカ拝金主義が常識化し、資本主義は金融主義へと発展し、資産運用が上手な3パーセントの富裕層が合法的に肥え太る時代である。日本に来ている観光客もほとんどが富裕層であろう。リピーターはほぼそうであろう。そうした人々のために、京都ではホテルが雨後のタケノコのようにできている。私は、何とも言えない悲哀と苦渋の中で、京都で生活している。
 京都の、人の住まなくなった小さな家では、かつてつつましい生活の中で、美意識を持つ人々が生きていた。それを地上げ屋が買い占めて、ホテルを作ったり、東京の医者、弁護士のセカンドライフ物件、投資物件として1億円以上で売りさばく。東京より安いから、投機対象になり、一年半は購入後、転売禁止の法律も京都市ではできている。 
 もっとも、京都も衰微してきているのは事実で、御所のねきの三条実美を祀る梨木神社は経営のために高級分譲マンションを敷地内に作り運営資金を得ている。三階建てなので目立たず、景観に配慮はしているが、京都は20年後には富裕層しか住めない街と化しているのかもしれない。それが世界の主要都市の実態である。私は世界、現在の実態の認識をすることしかできない。


                       
                               2022.11.14   月曜日

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