藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

政治の対立軸の変遷 佐和隆光 2022.12.4 日 京都新聞 朝 天眼

   

  政治の対立軸の変遷 佐和隆光 2022.12.4 日 京都新聞 朝 天眼
    大意要約
 1989年 ベルリンの壁崩壊 資本主義対社会主義の対立軸の消滅
 1991年 ソビエト連邦解体
 1993年 細川護煕非自民連立政権成立  自民党対社会党二極55年体制の終焉
 のち、佐和氏は「保守(新自由主義)対リベラル(第三の道)」の対立軸で欧米、日本の政治をとらえようとした。
  例  英国   サッチャー保守党政権対ブレア労働党政権
     米国   保守の共和党対リベラルの民主党
 2001年4月~2006年9月 小泉純一郎政権 郵政3事業民営化を始めとする新自 
                 由主義改革を実現。 佐和氏は自民党の本格的な保守  
                 政党のアイデンティティーの確立と思った。
 2009年 社会党は非自民勢力の集合離散の果てにリベラル色を鮮明にする鳩山由紀夫
       内閣の一翼を担った。


       結局、新自由主義もリベラリズムも日本の政治風土にはなじまなかった。


 2012年末 総選挙で自民党圧勝。安倍晋三内閣が発足。国家主義に与する資本主義が
         安倍政治の本質だった。古い自民党が不死鳥のごとくよみがえった。
         他方、リベラルの衰退は見るも無残だった。


         欧米諸国でも保守対リベラルの対立軸の存在感は薄れた。
2015年の米大統領選挙でトランプ候補は反移民・反中国など白人労働者の熱狂をあおる
         ポピュリズム・スローガンを掲げて大統領選を勝ち抜いた。
         欧州諸国でも極右ポピュリズム政党が台頭し、規制二大政党を窮地に追
         い込んだ。
2020年 米大統領選でトランプを退けたバイデン大統領は「民主主義対権威主義」とい
      う素朴な対立軸で世界の分断を試みる。トランプ政権をしのぐ強硬な対中制裁
      を次々と打ち出すバイデン。
      「権威主義国(中露両国)の軍事的脅威から民主主義を守る」のがバイデン政権
       の国家安全保障戦略を正当化する大義名分。
 権威主義国を供給網から排除すれば、民主主義国の経済成長は減速され、物価は高騰し、学術・国際交流の断絶は人類の知財の蓄積を阻む。
 権威主義国が民主主義国・地域にあたりかまわず軍事侵攻するわけではない。
 米中間選挙で民主党が善戦できたのは、理念なきトランプ流ポピュリズムの泡沫性ゆえであり、米国民の多数派が対中制裁のさらなる先鋭化をバイデン政権に催促したからではあるまい。佐和氏はそう言って、天眼記事を終わっている。


  ノート
 佐和隆光氏は元京大教授。計量経済学が専門。過去40年の世界の政治の歴史をこれほど明晰に回顧したものは類例がないと思う。しかも、文化的な回顧である。なぜ、「新自由主義もリベラリズムも日本の政治風土にはなじまなかった。」のか。実力競争と強権政治(新自由主義)も実践能力なき理念・理想政治(リベラリズム)も日本人が好まなかったのは、日本人が拝金至上主義にも空理空論にも与せず、自らの生活を大切にして、心のゆとりのある生活を求めていたからかもしれない。
 小泉・竹中二大悪党のせいで、四割非正規雇用社会が現実のものとなり、アメリカのジョブ型労働を45%が受け入れ、45パーセントが拒否し、残りの10%はどうしたらいいかわからないというのが現状である。ジョブ型労働とは、週60時間以上働くことを求める労働で、能力が高く、今まで勝ってきた、勤勉に努力することに慣れている人たちは「一丁やってやろうじゃないか!」と鼻息が荒いが、彼らは能力のない者に対して冷淡で、能力のない、運の悪い者を蔑んでいる場合が多い。それがアメリカ社会の現実で、日本に伝播してきている。ニューヨークはそんな街。なおざりにされた者のほうが圧倒的に多く、それらの人々はルサンチマン(不平、不満、憎悪)を勝ち組に対して持つ。ウィンウィンとは程遠い社会の到来が日本でも現実のものとなりつつある。その認識を新たにしたい。
                       
                               2022.12.7      水曜日

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