藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

無意識について

            ユング  集合的無意識



 無意識について
 無意識を発見したのはフロイトである。近代に二つの発見があった。一つは社会における階級の発見。もう一つは人間の内心の無意識の発見。前者はマルクスによって。後者はフロイトによって。
 フロイトは無意識を暴風雨のようなものと考えて、忌むべき、コントロールできないものと考えたようだ。しかし、そのあとのユングは集合的無意識を考えて、人類は深層で手と手をつなぎあっていると言った。ユングは文学的だと、理系の人たちの間では認められていないようだ。
 アメリカでも無意識はよくないものと考えられているようで、ルース・ベネディクトの『菊と刀』でも、アメリカ人は無意識を自己の意思の敗北と考えるようだと述べている。しかし、日本では「道」を求める人は無意識の融通無碍の心理状態を理想とするとも述べている。『荘子』の影響があるだろう。『菊と刀』を読んだであろう映画『ラストサムライ』の監督は、やはり「剣の道」の究極を無意識、無の心理状態の「悟り」の状態としてとらえている。
 日本人は自然の中に没入して、自然と一体になることを理想とする。唐詩で王維が好まれ、それ以前では陶淵明の詩が好まれるゆえんである。「大自然の懐に抱かれる」という表現は日本人の好む表現である。日本人にとって、無意識はコントロールできない、危ない心理状態ではなく、我執のない、好ましい状態であるようだ。仏教の影響もあるであろう。

                  

    2022.12.21   水曜日

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