藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

『若い人』

 

     『若い人』2023.1.3 BS12    pm6:00-7:45
    地方女子高校を舞台に描く青春物語。石坂洋二郎原作。
 間崎慎太郎(石原裕次郎)は教え子の江波恵子(吉永小百合)が母、江波ハツ(三浦充子)の酒乱に悩む姿に同情からできるだけ配慮をするようになる。
 恵子が妊娠し、相手が真崎だといううわさが流れた(事実無根)が、出所は恵子で、橋本は嫉妬する。恵子は父親を知らず、元売春婦のハツを母親と認めたくない。やりきれなさのはけ口が間崎であった。恵子は間崎が橋本を好きなのはわかっているが、私も先生を愛している、私は先生が必要なのよと言う。
 恵子は最後に間崎に「橋本先生と結婚なさい」と言って、間崎と別れ、一人歩いて行く。


    ノート
 物語に解決はない。尻切れトンボの感は否めない。しかし、これが「若い人」のリアルさなのだろう。
 恵子の抜き差しならないような言葉、切羽詰まった言いようには青春期特有の狭さと純粋さが象徴的に表現されていて、恵子を演じる吉永小百合の女優としての優秀さが光る。吉永小百合の演じる女性は、ひたむきで一途である。かつて理想とされた日本女性の情調を表現している。
 石原裕次郎は、まっすぐでさっぱりした教師役を立派に演じている。かつての「男らしい」男の典型であることが理解できる。
 学校の身体検査の内科検診で学校医が「早く脱ぎなさい。わしだってそんな痩せた体を見たくないんだよ。早く脱ぎなさいよ。」というのは、今なら完全アウトであろう。昔の映画には「現在からみれば不適切な場面がありますが、作品の意図を尊重してそのまま放映します」という但し書きが流れることが多い。時代の常識は変化してきている。
 原作はもっとドロドロしていて、間崎はハツと恵子の両方を愛し、恵子と結ばれている。それで、妊娠が生きてくる。1937年の原作のため、右翼から抗議が出て、石坂洋二郎は教職を辞している。そうした面が捨象されているから、映画は中途半端な内容となってしまっている。本作は何回か、違った監督で映画化されている。なぜか、BS12は、制作年、監督を明記していなかった。そうしたことをテレビ局は無断で行うことがある。


 今回の作品は以下のものである。
1962年10月6日公開 - 製作:日活、監督・脚本:西河克己
出演:吉永小百合(江波恵子)、石原裕次郎(間崎慎太郎)、浅丘ルリ子(橋本スミ子)、大坂志郎(山川医師)、三浦充子(江波ハツ)、北村和夫(江口健吉)、小沢昭一(北村敦)、村瀬幸子(山形アツ子)、井上昭文(畠中登)、武智豊子(瀬川フミ)、殿山泰司(瀬川善吉)、三崎千恵子(山川ヒロ子)ほか  三崎千恵子は寅さんの「おばちゃん」役で有名。殿山泰司も出ている。
                            
    2023.1.5   木曜日

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