藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

2022年4月から全国の高等学校で新しい科目「歴史総合」の授業が始まりました。

   

  

2022年4月から全国の高等学校で新しい科目「歴史総合」の授業が始まりました。
 小川幸司編 成田龍一編 『世界史の考え方』シリーズ 歴史総合を学ぶ① 岩波書店 岩波新書(新赤版)1917
 18世紀以降の近現代史を「日本史」「世界史」と分けずに総合的に学ぶ「歴史総合」が始まった。歴史と「私たち」の関係を探り、歴史に問いかけ、互いに議論し対話することが目的とされている(同書 ⅰ)。この機会をとらえ、あらためて歴史学と歴史教育の架橋を図り、さらに歴史学と歴史教育のそれぞれの営みを深めていくことを願い、「シリーズ歴史総合を学」が刊行された(同書 ⅱ)。
 本書で、大塚久雄のように資本主義と市民社会の同時的な生成を遂げたと考えられたイギリスをモデルとして各国の歴史をタイプ別に分類する世界史を描くならば、どうしてもヨーロッパ中心主義になる。川北稔のように、世界の諸地域を「支配する側」と「支配される側」に構造化していったのが資本主義の歴史であるとみて、その世界システムが現代社会の格差の問題につなかっていったとみるならば、ヨーロッパ・アメリカをモデルとするような見方ではなくなる。岸本美緒の近世論では、中国とヨーロッパの近世の違いをみつめて、それぞれの近世のあり方を発展段階論の克服からもくろんでいる。世界の近現代を見つめるときに、各国・各地域を「比較」するという方法を用いるわけであるが、「発展段階」という一元的な参照軸から見るのではなく、人々の多様性が浮かび上がるような方法にする必要がある(同書 pp.68-69)。


        ノート
  最近、本書を京都市図書館で借りて一読したが、高校の先生が果たして教えられるだろうかと思った。「指導要領」をなぞるようなことなら、誰でもできるが(多分、現場ではそうするでしょうが)、「歴史総合」を教えるための「比較文化」学的な視点を持つには、高く深い教養が必要とされる。分析的であって、総合的でない従来の教育への反省は感じられるが、我々の77年間はアメリカを中心とする社会の流れであって、それは価値観、思考、嗜好すべてに行き渡っていることをまず認識し、自覚することから始める必要がある。アメリカ化の良い点と悪い点を自覚的に認識することから始めたい。そうした視点がないと、「歴史総合」はうまくいかないだろう。知らんけど。

                          

           2023.1.11  水

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