藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

2023.1.17 火 京都新聞 朝刊 佐伯啓思 現論 失われた伝統的な信仰

           

          佐伯啓思氏 ← 昔はそんなによかったか?   


  2023.1.17 火 京都新聞 朝刊 佐伯啓思 現論 失われた伝統的な信仰 
     大要
 佐伯啓思氏は京大名誉教授。戦後民主主義批判でつとに有名である。戦後民主主義は人々を農村から都市へいざない、拝金主義の奴隷にした、そのお先棒を担いだのが戦後民主主義だというのが氏の持論である。
 この「現論」という社会批評風の文章では、宮城県立がんセンターで呼吸器科医長を務めた岡部健医師について、治療が目的の病院では、安らかな死を迎えることはまず不可能なことを痛感した岡部医師が終末期患者の自宅死を見届けることを自分の仕事にしたことを取りあげている。岡部医師は在宅患者の多くはすでに死んだ近親者の「お迎え」を経験し、そのことが精神の安定につながっていることを発見し、来世を信じる宗教心が必要だと言う。それに関連して、佐伯氏はそれが戦後の日本から消えてしまい、合理主義者の信者であり、生の充実の追及者である我々は「死」を直視することをやめた、「死」という絶対的な「何ものか」の力を感じ、それに従うしかないと知る時、我々は宗教に触れている、それが未知の深い闇へ向かうという恐怖を多少なりとも和らげると言う。
 かつての日本人は多くが自宅で家族に看取られ、無理な延命もなく死んだ、死は我々の近くにあり自然な現象であったように私には思われる、という言葉で佐伯氏はこの批評を終わっている。


     ノート
 佐伯氏は、戦前を美化しすぎている。家族に看取られて自宅死できない人が急増していることに関心がいっていない。現状認識がなく、「昔はよかった」と言っている繰り言老人と同じである。
 戦後民主主義批判を売りにする、「京大名誉教授」もこの程度である。佐伯氏の考える宗教はどうやら「浄土教」的なものらしく、浄土教が流行った時代に人々が自殺して死に急ぐ現象が急増し、念仏禁止令が時の為政者によって出されたことには言及しない。五木寛も同じだ。
 「昔はよかった」と安易に言い、かつての宗教を安易に肯定するのは無責任だ。やめてもらいたい。「京大名誉教授」と言ってもこの程度である。元「国家公務員」の名誉教授だから、勤続年数が長く、年金もたくさんあり、勝手なことを講演で言いふらす。お気楽なインテリ先生が安らかな死を迎えられるかどうか、はなはだ疑わしいと思うのは、私一人ではないだろう。
                              
     2023.1.21   土曜日

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