藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

春風亭一之輔

    

    春風亭一之輔  旬の落語家
 今、旬の落語家は 春風亭一之輔である。落語会をやれば、チケットがすぐ完売で取れないそうだ。
 笑点に出て三回目で、どんどん頭角を現している。
 落語家は客を笑わせてなんぼである。一之輔の目つきと風貌から批判的な言葉が口から飛び出すのは想像に難くないが、自分を馬鹿にするような諧謔の精神(それはおそらく江戸落語の持つものだろう)の匂いがするのが素晴らしい。
 先ごろ、亡くなった円楽師匠は理屈っぽい他者批判で、眉を顰めることもあった。「ジジイ」とか「先がない」などと先輩、歌丸師匠に対して冗談でも口に出していうことではない。それを芸風にするのは思慮が足りなかった。残念なブーメランであると思う。
 一之輔は笑点の司会の春風亭昇太を俎上に上げて「誰でもできる司会」とか平気で言う。ドッカンと笑いをとれるのは芸の力である。根底に諧謔があるから、受けるのだろうか。
 「犬のくそ」などという汚い言葉も笑いに使い、それも二回使うが、三回目は使わない。
非常に頭がいいが、頭の良さを見せない。自分の緊張を見せないのも芸の力である。
 自分をあざ笑うような諧謔の精神のある落語家の出てきたことに心から拍手を送りたい。当たり障りのないことを放送するテレビには元来、なじまない落語家だが、どのように自分をつぶさないで、テレビに媚びないで笑いをとっていくか、見ものである。笑点の視聴率もぐっと上がっていることだろう。
  頑張れ、一之輔!


                              2023.2.24  金曜日

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