観光経済と住民生活の両立
観光経済と住民生活の両立
2023.3.8 水 京都新聞 夕刊 現代のことば 森千香子「海辺の町から」は観光経済と住民生活の両立について考えていて示唆的である。
フランス西部の海辺の町、ブルターニュ地方の沿岸部の例を挙げる。民泊の発展に加え、国際的な投資ファンドの土地買い占めなどで地価が急騰したブルターニュ地方沿岸部では、コロナ禍後、首都圏の裕福な住民などが「多拠点生活」をするために土地、家屋を購入する事例が増えた。ブルターニュ地方沿岸部の自治体ではセカンドハウスの割合が70%を超えるところもある。 地元の住民は住まいを購入することができないどころか、賃貸することも難しくなるという事態が報告されている。こうした「住宅危機」に対して、住民運動が活発化して、超党派の政党連合「ブルターニュの将来」が民泊の制限、家賃観測所の設置と家賃安定化措置の導入、不動産購入時に1年以上の居住を条件とする「居住者許可証」の導入やセカンドハウスへの住民税の上乗せ(最大60%)が提案された。
こうした事例は、観光の再開が本格化しつつある京都の住民にも無縁のものではない。「観光経済と住民生活の両立という課題に対し、海辺の町の住民運動から得られる示唆は少なくない」と森千香子氏は文を締めくくっている。
ノート
森千香子氏は国際社会学、都市社会学が専門の大学の先生。京都市の住民生活の問題を取り上げることが多い。本エッセイも事例として参考になる。
ただ、現実問題として、「超党派の政党連合」は京都では無理だろう。その「伝統」がない。与党と「老舗」左翼既成野党の確執は水と油である。それにセカンドハウスへの住民税の上乗せは、京都市長も実行している。
今、京都では、市外流出が多く(かつては現在の長岡京市へたくさん市外流出した)、自然と行政の子育て支援に恵まれた大山崎のほうへ転出していく若い夫婦も多い。京都市内は、観光目当てのビルがたくさんできている。京都御所近くの京都新聞の前にあった京都商工会議所も四条のほうへ移転し、観光客目当てのホテルに変貌している。シックな色合いにしているので目立たないが、「死の館」感がある。
京都も拝金主義に染まっていくのか。やたら手作りパンの店が多く、職人の町の風情は残っているが。
変わらぬのは京都御所で昔も今も鳴く鶯の鳴き声のみか。(この辺、京都的。無常の移り変わりの中の常住不変。)
この時期になると、早朝、京都御所では鶯の親鳥が子の鳥に鳴き方を教えるのが聞こえる。子の鳴き方も下手だったのがだんだん上手になる。無上の風情がある。
ホーホケキョ 鳴き方学びて 御所のしののめ
2023.3.13 月曜日