藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

日本 (2006) あかね空  2023.3.9 木 BS4 p6:30-8:54

    

    日本 (2006) あかね空  2023.3.9 木 BS4   p6:30-8:54
           あらすじ
 柔らかい上方豆腐。腰のある、硬い江戸前木綿豆腐。京育ちの永吉と江戸っ子の長屋育ちのおふみ。江戸情緒を背景とする人情映画。
 上方のものを「下る」くだる と言って、珍重した江戸時代。しかし、最初、江戸では上方の豆腐は受け入れられなかった。近所の豆腐屋主人(子供が小さい時に行方不明になり、その子と栄吉をだぶらせている)のかげの計らいで、近くにある寺で毎日、五十丁、豆腐を買ってくれることになる。永吉とおふみは夫婦になり、豆腐屋「京や」を経営していく。
 浅間山の噴火や飢饉で、豆が高騰。しかし、永吉は頑として豆腐の値段を上げようとしない、京都の豆腐の師匠の教えだと譲らない。
 永吉の長男は賭場に出かけて借金をつくる道楽息子。豆腐寄り合いの一人が長男を計略にかけて借金をかたに京屋の乗っ取りを図る。計略をする男に中村梅雀がなり、姑息な演技が光る。
 永吉が不慮の事故で死んで後、くだんの寄り合いの男に京屋を乗っ取られそうになるが、小さい時に行方不明になった男(賭場の寺の僧であり、賭場の胴元)が助けて、事なきを得る。家族は仲良く新たに豆腐屋を始める。


      ノート
 親との生き別れという不幸を持つ男が豆腐屋を誠実に営む商いの姿勢によって、その豆腐屋の危機脱出の因となる。豆腐屋は、親と生き別れになった男の親で、近くにいる高齢の豆腐屋に陰に陽に助けられていた。近くの高齢の豆腐屋の情けが豆腐屋へかけられ、更に誠実な商いの姿勢が高齢の豆腐屋の生き別れの子供をも引き付けて、豆腐屋は店を乗っ取られるという危機を脱する。生き別れの子供も豆腐屋を助けたことによって心安らぐことになる。豆腐屋の誠心が良い因を引き寄せている。「情けは人のためならず」。情けをかければ、いつかまわりまわって自分に返って来る(金とかだけでなく精神的な安らぎとしても)という「情けは人のためならず」の元の意味が生きているような映画。
 アメリカ映画にこうした心の問題、倫理を描くものはないのでは。アメリカ映画の基本は「自由」である。(度を過ぎると、ダーティハリーに射殺される。おおこわ。)仏教の因果応報、縁起論の影響がみられる映画。映像が美しい。中谷美紀のおふみの演技が光る。ヒステリーを起こして、豆腐屋の旦那に「私と話し合って決めてきただって?あんたは自分で勝手なことをしてきただけじゃない!」と食って掛かるシーンは秀逸。多くの妻の夫への気持ちを代弁しているような。おおこわ!


                             2023.3.14   火曜日

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