藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

的場昭弘(2022)『マルクスで読み解く世界史』教育評論社


  的場昭弘(2022)『マルクスで読み解く世界史』教育評論社
 マルクス主義も今や20世紀の思想。しかし、資本主義社会が金融社会になるという予想は当たっている。金銭の物神化も当たっている。対立・闘争史観は片手落ち。共同体史観もある。それも真実。人は争いもするが、平和に暮らすこともある。どちらか一つだけではない。
 革命は予想したイギリスではなく、ロシアで起こった。飛び越えの論理である。マルクスはそれを否定していた。生命尊重さらさらなし、無産階級の資産階級に対する暴力革命肯定。ロマノフ4世皇帝一家の悲惨な最後。可憐な4姉妹も惨殺。レーニン、スターリンの権力集中と恐怖政治。マルクス自身、権力奪取に励んでいた。かくもマルクス主義は当たりはずれのまだら思想。マルクス主義は世界観だから、絶対譲れない。カルト宗教的。しかし、かつては人道主義とオーバーラップした時もあった。生産力の発展で疎外される人間の苦悩を問題にした。しかし、権力の集中の恐ろしさよりは権力集中の全能性を信じた。それに人々は腰が引けた。
  本書は、マルクスを一貫してジャーナリストとして研究してきた著者のマルクス探究書。イギリスのインドへの綿製品輸出によってインドの綿花栽培が壊滅状態に陥ったことをインドに資本主義が根付くからいいことだとマルクスは肯定(pp.42-43)。
 中国とイギリスのアヘン戦争、アロー号事件は中国のイギリスの不当な攻撃への反抗心を刺激し、中国自身が、イギリスが作り上げた帝国主義的資本主義体系を破壊する要因につながるとマルクスは指摘した(pp.65-66)。
  こうした中からマルクスの再評価が出てくる予感有り。宗教も中興の祖が出て当該宗教をリメイクしてその時代に合うようにしたところがよみがえる。それをしないと衰微して滅びていく。構造は同じだ。原理主義者からは新しいものは生まれてこない。この世の矛盾に苦悩し、どうすれば民衆の支持、賛同を得られるか、直観力のある、視野の広い慈悲心に満ちた天才の出現が望まれる。拝金主義を打て!



                                                2023.3.15   木曜日

×

非ログインユーザーとして返信する