ジェームズ・フレイザー著(1994)『図説 金枝篇』東京書籍
ジェームズ・フレイザー著(1994)『図説 金枝篇』東京書籍
ローマの近くにネミという村があり、その村には神殿があり、男がその祭司になるには、聖なる森の一本の枝――金枝――を手折り、それで時の祭司を殺さねばならなかった。そうして祭司職は継承された。なぜ時の祭司を殺さないといけないのか、金枝を手折らなければならないのか、この二つの疑問に対する答えを求めるのが『金枝篇』の目的である(p.23)。
フレイザーは共感呪術を類感呪術(類似の法則。例えば、相手に似せた人形を作り、針を突き刺す。)と感染呪術(接触の法則。例えば、相手と関係のある髪の毛などを手に入れ、それに害を加える。)に分ける。類似と接触は未開人のものの考え方に強力な影響を持つものとみなした。
フレイザーの説の第一段階は、1888年で、トーテムとタブーに関する記述で、トーテム崇拝の儀式は神が民のために死ぬ犠牲的行為とみなした。第二段階は、1890年『金枝篇』発表で、殺される神が核心テーマであった。第三段階は、1890年から1910年で、個人のものの考え方は、呪術的→宗教的→科学的と変化するとした。1890年代、合理主義の風潮の中でそういう考えの変遷があった。
ノート
比較文化の名著である。文明からの野蛮の解明を内容とする。広範な世界の事例を集めて、「野蛮」の中の、トーテムとタブーなどの象徴的行為の解明を試みた。文明から見た「野蛮」への差別も甚だしいと批判されるが、「野蛮」の理解によって文明をも理解することを目指したように見受けられるのは、すぐれたところである。
2023.4.14 金曜日