藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

南船北馬  「馬」の文化と「船」の文化  福永光司

    

     南船北馬  「馬」の文化と「船」の文化  福永光司
 
 岡倉天心は「支那南北の区別」で中国文化を中国北方の儒教文化と中国南方の道教文化に分けて論じた。後に茶道を「隠された道教」「哲学的道教」と位置付けた。
 福永光司(2018)『「馬」の文化と「船」の文化』新装版 人文書院 は、「南船北馬」の実体を北の儒教文化と南の道教文化として論じた。また、その二つは日本に伝わり、日本文化にも同様の二種があり、日本文化は二種の混合であると説明している。


 「馬」の文化 対 「船」の文化 = (一)日輪と紅色は 男性の象徴 対 女性の象徴 (二)右前 対 左前(衣服) (三)偶数の重視 対 奇数の重視 (四)直線的 対 曲線的 (五)剛毅 対 柔軟 (六)有為 対 無為 (七)父系性社会 対 母系制社会 (八)「道」を 垂直線上に推定する 対 水平線上に推定する   という二項対立がある。


   ノート
「馬」の文化 対 「船」の文化 = (一)日輪と紅色は 男性の象徴 対 女性の象徴。
 太陽信仰は日本で根強く、神道で天照大御神は女性とされる。これは「船」の文化で南方系の思想ということになる。
 また、福永光司氏は、江上波夫『騎馬民族国家』を北からの日本文化論、柳田国男の『海上の道』を南からの日本文化論とし、古代日本の文化や社会の形成は、南の「船」の文化と北の「馬」の文化の混成複合の文化であるとしている(福永(2018)p.45)。
 中国から日本へもたらされた文化。水田稲作農耕、銅や鉄の金属器の文化、漁労文化、医療文化、占いの文化。今まで、日本の教科書や学界では、最初の二つの中国から日本への影響しか重視してこなかった。後ろの三つも日本文化の歴史の中で重要な役割を果たしている。(同p.44)
   福永光司氏は儒教文化だけでなく、道教文化も日本に影響を与えたという考えの学者。こういう異端的な、ユニークな学者が出てくるのは、京大系の学者の面白いところである。内藤湖南しかり。現在では、国際日本文化研究センターの磯田直史氏である。磯田氏の師は速水融氏である。速水氏は人口歴史学という人口の変化から歴史を説明しようとするユニークな学を確立した。


                             2023.4.15  土曜日


 


  


















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