藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

言語道具説と言語世界観説

 

     英語と日本語の世界の切り取り方の相違  言語世界観説


 言語道具説と言語世界観説
 英語のbookは日本語で「本」、中国語で 书 シュー 、フランス語でリーブル。実態についての呼び方が違うだけというのが言語道具説。外国語初級教育は基本的に暗黙的に言語道具説に基づいている。
 いや、そんなことはない。英語のbookと日本語の「本」は異なり、それぞれの文化的背景が異なるというのが、言語世界観説である。言語世界観説はサピア・ウォーフ仮説が有名である。
 言語道具説はわかりやすいが、すべてを説明しているものでないことはみんな知っている。直訳だけでは済まないから外国語は難しい。
 言語世界観説のサピア・ウォーフ仮説によると人間は話す言葉によって支配されている。その言葉の世界観によって思考を規定されているとする。
 言語世界観説を突き詰めると、言葉がなければ、そのものは存在しないということになる。例えば、「肩こり」は日本語特有のもので、英語母語話者には存在しないということになる。
 現実には、言語道具説と言語世界観説は、両方混ぜて、折衷的に運用されている。
 こういう二つの考え方があるということは知っておいたほうがよい。
 「言葉狩り」というのは言語世界観説に基づくものだが、差別的な言葉は使用しないほうがいいのは確かだ。他人の心の痛みがわかる人間でありたい。


         2023.5.26     金曜日

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