藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

毛沢東について


          毛沢東について
 毛沢東についての現在の一般的な評価は、中華人民共和国成立前はよかったが、成立後はよくないというものだ。中華人民共和国成立前は、中国共産党、毛沢東は八路軍の高い倫理意識で人民のものは盗らず、人民に服務することを旨とし、国民党の下級軍人が食事した店で食事代を踏み倒したり日常茶飯事としていたのに対して、好対照と賛美された。
 中華人民共和国成立後、毛沢東は極端な工業化政策や人民公社設立を行い、実情に合わず、多くの餓死者を出したり、政治闘争で多くの人を死に追いやった。反右派闘争や文化大革命がそれである。抽象的な「階級意識」を中心として、無産階級の独裁を標榜したが、科学技術は発展せず、他国の実情を見て、遅れているのは自分たちではないかと反省し、日本を中心とする先進国に学び、日本も戦争、侵略の過去への贖罪意識から中国の経済発展に寄与した。大企業のトップがそういう方針をとった。10年前から、中国の経済力はすでに日本を凌駕しているが、日本人の半分は日清戦争以来の軽侮意識を今も持ち続けている。
 閑話休題、毛沢東の中華人民共和国以前のことで、一番、不思議なのは、革命は都市中心で行うのが常識であるのに、農民、農村の解放を中心としたことである。最近は、コミンテルンがそう指導したという説もあるが、羽仁五郎の『都市の論理』などを見ても、都市を解放するのが共産主義革命理論の中心である。毛沢東が農村の中農出身であることも関係しているのであろうが、都市よりは農村、農民に信を置いていたことは事実であろうし、そこに中国革命の独自性があったというのは、客観的事実であろう。湖南農村活動報告がそのことを毛沢東に確信させたというのが通説である。


                            2023.6.1    木曜日

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