藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

ジェンダーアイデンティティと言い換えた意図は?

  

   ジェンダーアイデンティティと言い換えた意図は?
 衆院内閣委員会で6月9日、性的少数者に対する理解を広めるための「LGBT理解増進法案」をめぐる審議が開かれ、性自認を「ジェンダーアイデンティティー」と表現する与党案の修正案などについて議論された。


 【性自認、性同一性、ジェンダーアイデンティティー】
 国民民主党・斎藤アレックス氏 (元の与党案で)「性自認」をなぜ「性同一性」と言い換えたのか。
 自民・新藤氏 法的な効果は同じだ。性同一性も性自認も、元の言葉は英語で言うとジェンダーアイデンティティー。中身は同じだが、性自認ということに対しては、(自称による恣意〈しい〉的な運用がされるのではとの)不安の声も聞かれた。
 国民民主・斎藤氏 (日本維新の会と国民民主の案で)ジェンダーアイデンティティーと言い換えた意図は。
 維新・岩谷良平氏 性同一性、性自認、いずれもジェンダーアイデンティティーの訳語だから同じだが、政治的な意味合いを持ってしまい、対立軸になっている。原語のジェンダーアイデンティティーをそのまま使うことで、多くの方々の理解をいただけると考えた。国際共通語でもある。


               2023年6月9日 20時00分  朝日新聞 Digital 参照


          ノート
 ジェンダーアイデンティティとしたのは、カセット効果を狙ったものである。カセット効果とは外来語で言えば、何かいいものと言うイメージができて、その内容はあとから具体化されていくという柳父章氏が明治の翻訳語「自由」「権利」などについて分析、批評した際に使用した概念である。
 まさに「原語のジェンダーアイデンティティーをそのまま使うことで、多くの方々の理解をいただけると考えた」という維新・岩谷良平氏の言辞はカセット効果を狙ったものと言える。漢語は現在、大陸中国のイメージがよくないので、カタカナ英語に押されっぱなしである。そういう背景もあって、漢語よりはカセット効果の高いカタカナ英語を多用するのである。 ジェンダーアイデンティティとしたのは、最近のその典型例である。


                            2023.6.27 火曜日

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