藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

和辻哲郎 『風土』 マルクス主義への対抗の書であることを忘れまい

   

和辻哲郎 『風土』  マルクス主義への対抗の書であることを忘れまい 和辻は御用学者?
 和辻哲郎(1935 年(昭和10))『風土―人間学的考察』は日本民族の特質は風土によって規定され、マルクス主義のような西洋思想をそのまま受け入れるものではないと考えたが「第二の回帰」=十五年戦争~敗戦の時期にこの書が書かれ、1935 年(昭和10)は2 月に天皇機関説事件が始まり、同年8 月に政府が天皇機関説は国体に反すると声明(第1 次国体明徴声明)を発した翌月にこの書が出版されていることは記憶しておいてよい。『風土』は、国体明徴運動を側面から支持する、マルクス主義批判の役割を果たしたと言ってもよい。和辻は御用学者ではないか?
 和辻哲郎は地球上の風土的類型をモンスーン型、沙漠型、牧場型の三つに分類し、志賀重昂の『日本風景論』が情念的、動的、立体的な自然美に価値を置く19 世紀西欧ロマン派の自然観に準拠したのに対して、『風土』は世界的風土の比較のもとに、日本の風土と国民性の特徴をとらえようとした、戦後、盛んになった、生態学的日本人論の先駆であると言える(58)。和辻によると、日本人はモンスーン型の風土に適する「受容的・忍従的」な国民で、そのモンスーン的受容性、モンスーン的忍従性は季節的、突発的で、日本人は淡泊に忘れることを日本人の美徳とし、結論として「日本の国民的性格」は「しめやかな激情、戦闘的な括淡」であるとしている。和辻の広い「風土」の視野であれ、その環境決定論への批判は強い。  拙著 私家版 『日本文化概論Ⅴ―日本の文化・『日本文化論』の研究-』より


                       2023.10.7     土曜日

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