藤田昌志 比較文化のブログ

和・洋・中を比較文化学的に考察する。トピックは音楽、映画、本の紹介、歴史、文学、評論、研究等 多岐にわたる。

林家木久扇師匠 3月31日で「笑点」卒業 2024.3.26

    林家木久扇師匠 3月31日で「笑点」卒業
 「ちょっとのつもりが60年以上だよ。」
 得意の絵を生かして漫画家になるつもりで約4年間、清水崑の書生をやっていたが、清水に勧められ、マンガのネタ作りのつもりで、三代目桂三木助に入門した。
 笑点レギュラーになったのは、69年。割り振られたキャラは「与太郎」というおバカキャラ。初代司会の立川談志が「木久ちゃんに合うんじゃないの」と言って決まった。
 立ち位置を探し、常に観客をどう笑わせるかを考えた。
 出自は東京、日本橋の雑貨卸売り商の息子。「根が商売人」という気働きが落語会を生きるうえでも役立った。談志には気に入られたが、暑い日に寄席の楽屋で「お風呂に生きたい」と言われ、タオルとせっけんを即座に渡したことがきっかけ。
 「いや~ん、ばか~ん」は70年代、笑点がアメリカ公演した際に、ジャズが受けるのではと、「セントルイス・ブルース」の節回しをまねて「いや~ん、ばか~ん」とやると会場は大爆笑。このネタは今も定番だ。
 卒業は昨春、妻にかけられた「そろそろいいんじゃないの」という言葉で決意。駅のホームで待つ間ですら笑いを期待された日々の終わりに「ほっとした」。
 今後も寄せ出演はするが、「今までは役目。これからは自分を楽しませる」とひょうひょうと話す。
 今の夢は長屋の住人が宇宙に行くアニメ映画の製作。


             2024.3.1金 京都新聞夕刊記事 内容要約 文責筆者


   ノート
 馬鹿を演じられるのは天才だけだ。 という言葉がある。
 林家木久扇師匠の芸を見ていると、どこまでが芸なのか、本当なのかわからないことがある。思わず笑ってしまう。本当の馬鹿と演じられた馬鹿が混然一体。それが芸の力だろう。
 「笑われてんじゃない、笑わせてんだ」という芸人がいる。
 しかし、笑わせてるのが鼻につくと観客は笑わない。
 大したもんだよ、木久扇師匠。
 パステル風の鮮やかな絵を描くことでも有名。
 木久蔵ラーメンもつぶれないで、続いている。
 人に気に入られるように気を回す人らしい。
 その臭みを「笑点」でみじんも見せないから、ただものではない。
 それを見せないのが「芸」の力だ。笑点メンバーはみんな、その力を持っている。そして、それを見る者に意識させない。江戸落語の諧謔精神が脈打っている。
                             2024.3.26  火曜日

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